トラック事業者が知っておくべき「適正原価調査」のすべて
はじめに|最近、全国のトラック事業者に届いている“あの通知”
「国土交通省から、見慣れない封筒が届いた」
「“適正原価調査”と書いてあるけど、これは何?」
「回答しないと、何か不利益があるのでは…?」
最近、こうしたご相談が、私のもとに急増しています。
通知の差出人は 国土交通省。
回答期限は 令和8年2月20日(金) と明確に記載されています。
結論からお伝えします。
この調査は、法律に基づく「回答義務のある正式な行政調査」です。
ただし――
✔ 監査ではありません
✔ 処分を目的としたものでもありません
むしろ、今後の運送業界のルールそのものを決めるための、極めて重要な基礎調査です。
本記事では、
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この調査は一体何なのか
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なぜ今、実施されているのか
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事業者として絶対に押さえるべきポイント
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そして、なぜ「正直に書くこと」が将来の自分たちを守るのか
行政書士の立場から、できるだけ分かりやすく解説します。
この調査の正体|なぜ、今このタイミングなのか?
背景にあるのは、貨物自動車運送事業法の改正
令和7年6月、議員立法により貨物自動車運送事業法が改正されました。
今回の改正の目的は、非常に明確です。
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トラックドライバーの適正な賃金を確保すること
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運送事業者の経営の健全化
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持続可能な物流体制を構築すること
この目的を実現するために、今後導入が予定されているのが、
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適正原価制度
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事業許可の更新制
です。
つまり、
「安ければ安いほどいい運賃」
「現場が疲弊しても成り立ってしまう価格競争」
こうした構造を、国として是正しようとしています。
なぜ「適正原価調査」が必要なのか?
国土交通省が目指しているのは、
机上の空論ではない、“現場の実態に即した制度設計”です。
そのために必要なのが、
実際に事業を行っている皆さんの
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人件費はどれくらいかかっているのか
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車両維持にいくら必要なのか
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燃料費や保険料、管理コストはどの程度か
といった、リアルな原価構造です。
つまり、この調査は、
❌ 事業者を監視・指導するためのもの
⭕ 業界全体の「適正な基準」を作るための資料
という位置づけになります。
事業者が必ず知っておくべき重要ポイント
① 回答は「任意」ではなく「義務」
この調査は、
貨物自動車運送事業法第60条第1項
および
貨物自動車運送事業報告規則第3条
に基づく「臨時報告」です。
つまり、
よくあるアンケートとは違い、法令に基づく報告義務があります。
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未回答
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白紙提出
こうした対応は、行政指導の対象となる可能性がある点には注意が必要です。
② 正直に書いても、監査資料には使われません
最も多い不安が、これです。
「正直に書いたら、後で監査で突っ込まれるのでは?」
ですが、通知文にははっきりと明記されています。
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調査結果は統計的に処理される
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個別事業者の情報は外部に開示されない
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運輸支局や労基署の監査等には使用されない
つまり、
実態をそのまま書いたことが、監査で不利に使われることはありません。
ここは、安心していただいて大丈夫です。
③ 回答期限は「令和8年2月20日(金)」
期限は明確です。
余裕を持って、計画的に対応しましょう。
なぜ「正直に書くこと」が、これほど重要なのか?
ここが、私が最もお伝えしたいポイントです。
原価を低く書くと、将来の自分たちが苦しみます
今回の調査結果は、
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標準的運賃
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適正原価制度
こうした今後の制度設計の土台になります。
もし、多くの事業者が、
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行政に良く見せたい
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荷主に配慮したい
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本当は苦しいけど、我慢している
という理由で、実際より低い原価を回答してしまったら――
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国が示す「適正原価」も低くなる
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将来の運賃交渉で不利になる
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結果として、経営は楽にならない
という悪循環に陥ります。
今こそ、現場の実態を“公式に”伝えるチャンス
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ドライバーの長時間待機
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燃料費の高騰
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任意保険料の上昇
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管理業務・法令対応コストの増大
普段、荷主との交渉では言いづらいこれらの現実を、
正式なルートで伝えられる数少ない機会が、今回の調査です。
遠慮する必要はありません。
真面目にやってきた事業者ほど、実態を正直に書くことが、業界全体の未来につながります。
回答時に押さえておきたい実務ポイント
【必ず守るべきこと】
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回答期限を厳守する
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未回答・白紙提出は避ける
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推測ではなく、帳簿・実績ベースで考える
【やってはいけないこと】
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行政に良く見せようと原価を低く書く
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「うちは特殊だから」と極端に簡略化する
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荷主目線で遠慮した数字を書く
特に“正直に”書くべき項目
① 人件費・労務関連
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ドライバー賃金(残業・手当含む)
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社会保険・労働保険の事業主負担
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有給取得、待機時間などの実質コスト
② 車両関連コスト
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車両購入費・リース料
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修繕費、タイヤ、消耗品
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任意保険料(高騰分も含めて)
③ 燃料費・変動費
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軽油価格の変動
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サーチャージで吸収しきれていない部分
④ 管理コスト・間接費
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運行管理・事務人件費
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システム利用料、点呼関連費用
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講習・帳票・外注費などの法令対応コスト
小規模事業者こそ、しっかり回答を
「うちは小さいから関係ない」
これは大きな誤解です。
国が本当に知りたいのは、
中小・零細事業者のリアルな実態です。
1台、2台規模の数字こそ、
今後の運送業界の“標準”を作ります。
まとめ|この調査は“未来への投資”
今回の適正原価調査は、
単なる事務作業ではありません。
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正直に書くことが、将来の交渉力になる
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実態を伝えることが、業界全体を守る
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今の一手が、10年後の運賃を決める
そう考えて、ぜひ前向きに取り組んでください。
回答期限は 令和8年2月20日(金)。
まだ時間はあります。
一つひとつ、丁寧に向き合っていきましょう。
(*´꒳`*) 読んでくれたあなたが、今日もちょっと笑顔になれますように (*´꒳`*)
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